こんにちは、米国登録栄養士の宮﨑です。
今回は2022/6/26(日)開催された第一回目のGNLセミナー「日本とアメリカの違いから学ぶ2型糖尿病管理の実際」の開催レポートを報告します!
このセミナーは、日本とアメリカの第一線で活躍される管理栄養士、登録栄養士の先生をお招きし、症例検討会(ケースディスカッション)形式で行われました。
登壇者:
いとう ひろよ氏 (管理栄養士・登録栄養士/Keck Medical Center of University of Southern California)
塩島 隆子氏 (登録栄養士/Kindred Westminster Hospital)
たかしな ようこ氏 (登録栄養士/カリフォルニア州立大学病院)
福元 聡史氏 (管理栄養士/トヨタ記念病院)
取り上げた症例
今回の症例として取り上げられた2型糖尿病患者の特徴は、
・HbA1Cが9.8%と高いこと
・BMIが35kg/m2を超えていること、
・中性脂肪(TG)も2000mg/dlを超えるほど高いこと でした。
このような症例に対してさまざまな観点でのディスカッションが行われました。
<Discussion1. 体重管理目標について>
BMIが高い患者では目標体重と大きな乖離があるが、そのような症例に対する体重の目標設定やその目標に対するアプローチをどのように行うのかという点が議論になりました。
福元 聡史氏
*登壇者の共通認識は
体重管理が重要!
ということでした。
*減量アプローチのポイント
・体重の数値目標を強調しすぎない
・段階的に目標を設定していく
(BMI36→34→32)
・5-10%の減量を短期的な目標と
する
などのコメントがありました。
塩島 隆子氏
<discussion2.検査値異常が複数ある場合に優先的に取り組む項目>
今回の症例ではHbA1Cの他に中性脂肪(TG)が高く、BMIも35を超えていることから、どの検査値異常からアプローチするのかについても議論になりました。
今回のケースのように検査値が正常値と大きく乖離している場合は、薬物治療が行われるので、ライフスタイルを変えるような食事指導に焦点を当てるといったコメントがありました。
また中性脂肪に対しては、
・カロリーの制限
・野菜の摂取
・魚の摂取や魚の油が含まれたサプリメントの摂取
などの対応策が挙げられました。
いとう ひろよ氏
<discussion3. 栄養カウンセリングのポイント>
登壇者が共通して強調していたのが、
「患者さんの栄養に関する知識レベルや行動変容のモチベーションを把握した上で、患者さんに適したカウンセリング、情報提供を行う」
ということです。
特にアメリカではさまざまな人種の患者がおり、教育レベルも異なることから、例えば炭水化物が何に含まれているかから学ぶ必要がある患者さんもいます。
また、知識がある方には食品表示ラベルの読み方を教えたり、数字がわかる方は数量を伝えたり、また場合によっては手を使って一食あたりの摂取量を伝えるといったコメントもありました。
たかしな ようこ氏
なお、アメリカで活用されることの多い、プレートメソッド(Diabetes Plate Method)やカーボカウンティング (Carbo-Counting)の紹介もありました。
糖尿病プレートメソッド (Diabetes Plate Method)
カーボカウンティング (Carbo Counting)
さらに日米の間食(スナック)に対する考え方や栄養士のアプローチの違いも話題となりました。
登壇者以外の参加者との質疑・意見交換
質疑応答では以下のような質問がありました。
Freestyleリブレのアメリカでの普及
魚のサプリメントの活用
日本とアメリカの栄養カウンセリングの時間、頻度などの違い
カーボカウンティングの詳細
サルコペニアに対する登録栄養士のアプローチ
糖尿病性腎症におけるたんぱく質制限
減塩食
アメリカにおける栄養カウンセリングの教育や経験の積み方
以上が「日本とアメリカの違いから学ぶ2型糖尿病管理の実際」の報告レポートになります。日本とアメリカの医療制度や患者背景の違いはありますが、改めて”違い”から学ぶことが多いと感じたセミナーでした。
これからも参加する人が何かしら学びのある有意義なイベントを開催していきたいと思います!
【執筆者:宮﨑拓郎】
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